「瞳を閉じて」と言う曲の題名を聞くと、映画「世界の中心で愛をさけぶ」の平井堅を思い出す人がほとんどだろうが、ジャズのリスナーはブルー・ミッチェル(tp)の1960年リバーサイドレーベルの「ブルース・ムース」の〈瞳を閉じて〉を思い浮かべるだろう。
結構アメリカン・スタンダードのパクリみたいなものもあるみたいだが、「PS・I・LOVE・YOU」と言う曲名を聞いたこともある。
「PS・I・LOVE・YOU」は、リー・モーガンのサヴォイレーベルの録音が有名だが、ジャズを知らない人に、熱心にその話をしても虚しいだけだ。
さて話は「瞳を閉じて」に戻るが、この曲の代表作として、先ず真っ先に思い浮かぶのがミッチェルの「瞳を閉じて」であろう。
バックでピアノを弾いているウィントン・ケリーがまたいい。ファンキーで名を売ったケリーだが、ラムゼイ・ルイスのような、安売りはしない人だ。
ケリーの上品な口当たりの良いフレーズを聴けば分かるように、ミッチェルを充分引き立てている。ラムゼイ・ルイスにはそれができないから安っぽくなってしまう。
トリオでも、カルテット、クインテットでも力を発揮できなければ、真のジャズピアニストとは言わない。
カルテットならメインはピアノではない。ホーンである。其処をわきまえて弾けるのがケリーの素晴らしさだ。
俺が、俺がのジャズ界だからこそ、控えめな人が逆に引き立つと言うことも言える。
俺が、俺がの代表者はマイルス・デイビスだが、彼の場合はクールにしろ、モードにしろ1950年、1960年の幕開けをした偉大なジャズメンだ。
70年代の幕を開けたのもマイルスである。しかし僕には大名盤よりもミッチェルの「ブルース・ムース」のような小名盤が何よりも宝物なのだ。