ジャズはアドリブを楽しめなければ、ジャズから足を洗うことになりかねないが、ジャズにはかた苦しくアドリブを演奏する時期や、ミュージシャンがいる。
そういう型にはまった時期のジャズは聴かないほうが無難だろう。
ビバップは初心者には向かない。アドリブが先行して曲が楽しめないからだ。
1960年代以降の新主流派なる一連のミュージシャンのジャズも避けたほうがよい。1960年代を楽しむなら、ネオ・スイングを楽しめばいい。
中でもピィー・ウィー・ラッセルは1920年後半から活躍してきたミュージシャンで、1960年代のネオ・スイングの中心的なミュージシャンでもある。
特筆すべきは、オーネット・コールマンのフリージャズをスイングさせてみせたり、ジョン・コルトレーンの曲までもスイングさせてしまう、その古いものには囚われない、斬新な切り口にある。
それらが収録されているアルバムが「アスク・ミー・ナウ」である。スイングには珍しいピアノレスのアルバムだ。ピアノレスとはピアノ抜きの演奏と言うことである。
表題の「アスク・ミー・ナウ」もセロニアス・モンクの曲で、スイングには向かない曲だ。それらを見事にスイングさせてしまうラッセルこそ新のジャズの追求者と言えよう。
あくまでも自分のスタイルを崩さずに、その当時のはやりの曲を演奏する。アドリブも聴きやすく優しい。
ジャズの入門書にはアドリブが複雑なものを紹介している評論家が多いが、アドリブが複雑であれば、あるほど、初心者にとってはジャズがつまらないものに聴こえてしまう。
いい曲にはいいアドリブが自然とついてくるものである。