ボストン・ジャズの代表格はチャリー・マリアーノと言うことになるのだろうか。むしろ僕は本作品の主人公サージ・チャロフのような気がしてならない。
ボストン・ジャズと、ウェスト・コースト・ジャズをごっちゃにするファンも多い。ボストン・ジャズはウェスト・コースト・ジャズに比べ音楽が重めである。
チャロフは33歳の若さで癌に侵され亡くなるが、残したリーダー作はそう多くはない。
本作品においても分かるように黒人ミュージシャンをバックにワンホーンで演奏したアルバムはこの1枚だけだ。
死の1年前に録音された本作品は、ピアノにソニー・クラーク、ベースにリロイ・ヴィネガー、ドラムにフィリー・ジョー・ジョンズと豪華なリズム陣に囲まれて演奏された。チャロフはバラッドの名手でもある。
特に「サンクス・フォー・ザ・メモリー」は感動を呼ぶ。強弱のつけ方が難しいバリトン・サックスでここまで演奏できるのは、チャロフをおいて他にない。
ソニー・クラークの参加でアルバム全体が黒い。それにしてもチャロフの死は早すぎた。
よってジェリー・マリガンがバリトン奏者の代表者のような事態に陥ったのは、少なからず残念である。