1955年マイルス・デイビスに二つの事件が起こった。一つはニューマイルス・デイビス・クインテットの結成。
もう一つはミュート・トランペットによる新しい可能性を発見したことである。それらが凝縮されたアルバムが「マイルス~ザ・ニュー・マイルス・デイビス・クインテット」だ。
時代はハードバップ期に入っており、マイルスにとっては挑戦だったのかもしれない。何故なら無名のテナーサックス奏者ジョン・コルトレーンを起用したからだ。
ここでマイルスはコルトレーンに、ソニー・ロリンズのような太く緩やかなフレーズを吹かせている。
コルトレーンのアドリブ部を聴くと一目瞭然である。特に1曲目の「ジャスト・スクイーズ・ミー」を聴けばよく分かる。
どう聴いてもロリンズのフレーズではないか。ここまで強制したのは、僕の考えだが、マイルスが本当はロリンズにニュー・クインテットに参加にしてほしかったからではなかったのか。
しかしこれがマイルス・デイビスの黄金のクインテットの誕生になるのだ。「ジャスト・スクイーズ・ミー」のマイルスのテーマの解釈はさすがと言うほかない。
ミュート・トランペットが効いている。 これがマイルスの一番いい時期の出発点とも言えよう。
一番いい時期とは1959年モード奏法を多用した「カインド・オブ・ブルー」が録音される以前のマイルスである。あくまでも私感ではあるが。