スタン・ゲッツをまず聴くなら「プレイズ」であろう。1曲を除いて全てスタンダードで、とても聴きやすく初心者向けである。
1952年の録音で、まだクールな部分もあるが、1950年録音の「スタンゲッツ・カルテット」よりは音に丸みがあり親しみやすい。
ゲッツの良さが全面にでたアルバムであるのも幸いしている。
ゲッツは気分でテナーを吹く。聴く側にとっては迷惑な話しだが、乗ったときのゲッツはジョン・コルトレーンではないが、神がかり的なフレーズを連発する。
これぞゲッツと言うフレーズはないが、時代に即したフレーズを吹くのがゲッツだ。ゲッツが自分のスタイルを持たないのは、個性がないからではない。気分屋なだけである。
しかしゲッツのテーマの崩しの妙は絶妙だ。これがゲッツの個性なのだ。そしてテーマに続きアドリブ部に入るが、テーマを崩しているのでテーマがどこでアドリブがどこなのか分からなくなる。
こんな芸当が出来るのはゲッツをおいて他にいない。それが色濃く現れたアルバムが「プレイズ」である。
一気一聴できて、何百回と聴いているが飽きることがない、モンスター・アルバムだ。とにかく1曲目の「星影のステラ」を聴いていただきたい。
初めて「星影のステラ」を聴く方にとっては、ゲッツの「星影のステラ」がそのままイメージとして頭にこびりつき、他のミュージシャンの「星影のステラ」を聴くと、そのテーマの解釈の違いに驚愕するに違いない。