女性ピアニストと言うと、いかにも女性の良さを全面に出してピアノを弾いていると思っている男性諸氏は多いと思うが、それは全くの間違いである。
秋吉敏子にしろ、大西順子にしろハード・バッパーが多い。その例にもれないのがパット・モランである。彼女のピアノの力強さには驚かされる。
コーラス・グループで人気を博したモランだが、1956年録音の「ジス・イズ・パット・モラン」では力強い演奏を聴かせてくれる。
特筆すべきは、ビル・エヴァンス・トリオのレギュラーの一員であるスコット・ラファロの参加にあるのではない。
モランのピアノ・ソロを聴いていただきたい。これだけ感動的に強弱をつけて流れるようにピアノを弾く人も珍しい。
初心者にはスコット・ラファロのきしむようなベースを聴いていただきたい。
ビル・エヴァンス・トリオのラファロの天才的プレイに比べ、モランのそれは4ビートランニングで自己アピールしている。
ビル・エヴァスを紹介したいのは山々だが、初心者にエヴァンスは難解であると判断して、割と聴きやすいものを紹介してきたが、選出したアルバムが僕の好みで耳にあわない方もいらっしゃるかもしれない。
しかし買って損はないと自負する。モランのソロのように力強さが僕の言葉に必要なのかもしれない。