1959年アメリカの喧騒(けんそう)から逃げるようにパリに渡ったバド・パウエルはパリで安定した仕事をもらい、精神的にも安定していた。
ザ・スリー・ボッセズと言う自らのグループも結成し、ブルーノート・クラブなどで盛んに演奏活動をしている。
アメリカ時代の精神的な発病もなく、パウエル自信もピアノを弾くことに喜びを感じているかのようだ。
パウエルのパリ時代のアルバムは評価が高いが、どうしても全盛期と比べてしまう評論家が多い。僕としては非常に残念でならない。
全盛期は誰にでもあるし、それが早いか、遅いかの違いである。マイルス・デイビスのように平均して評価が高いミュージシャンの方が珍しいのだ。
「バド・イン・パリ」は1,2曲目にテナーサックス奏者ジョニー・グリフィンとのデュオによるもので、パウエルのリラックスした演奏が聴くことができる。
インプロビゼーションにも冴え、軽やかなピアノタッチである。グリフィンも勢いのある時期でハードなプレイを聴かせてくれる。
3曲目以降はピアノ・トリオ中心の演奏が続くが、ケニー・クラークのドラミングに耳がいって、パウエルのプレイに集中できないのが難点であるのは、贅沢な聴き方だろうか。