1954年プレステージレーベル録音の「バグス・グルーヴ」マイルス・デイビスの二つのセッションをまとめたものである。
この二つのセッションでマイルスは自由奔放でハードなフレージングを聴かせる。それまでウエスト・コーストにジャズの中心はあった。
かのクリフォード・ブラウン、マックス・ローチの双頭コンビもこの年にウエスト・コーストで、歴史に残るライブ録音を収めたアルバムを発表した。
しかし僕としては、とりわけ重要視はしていない。何故ならブラウンは既にハード・バップの形を彩っていたからだ。
一方のマイルスである。ソニー・ロリンズはこのアルバムで3曲、曲を提供しているが、既にロリンズ節のようなアドリブもわずかではあるが聴いてとることができる。
そして〈バット・ノット・フォー・ミー〉テイク2.がマイルスの緊張感振りを思わせる。ブラウンではないハードな自己のフレーズを探求しているかのようだ。
このセッションは54年1月のセッションである。これがマイルスのハード・バップだと思わせる6番の〈ドキシー〉。ロリンズの作によるもので、実にロリンズらしい曲だ。
ラストの〈バット・ノット・フォー・ミー〉テイク1.はマイルスが楽をしているのが分かる。いかにもこれまでのマイルスらしいフレーズだ。