ウエスト・コーストで数々の名のある名盤に、名前を連ねているピアニストがいる。カール・パーキンスである。
パーキンスは左腕に障害があり、独特のスタイルでピアノを弾く。
左腕をピアノの鍵盤に乗せるようにして弾くわけだが、これがイン・テンポの場合は左手でコードを弾くわけで、やはり音が弱く聴こえてしまう。
そこで、これはあくまでも僕の想像だが、右手のタッチが、弾いていく間に強くなっていったのではないだろうか。
右手のタッチの強さがパーキンスの魅力であり、逆境を乗り越えた末に出た答えなのだ。
パーキンスは「イントロデューシング」と言うリーダー・アルバムを1枚だけ残してこの世を去った。交通事故である。29歳という若さであった。
その才能はあまり評価されなかったようだが、例えばカーティス・カウンス(b)のバンドにレギュラーで参加していたパーキンスのバッキング、ソロ、どれをとっても素晴らしいではないか。
特に「ユウ・ゲット・モア・バウンス・ウイズ・カーティス・カウンス」の5曲目〈ストレンジャー・イン・パラダイス〉のパーキンスのバッキングにしびれてしまう。
それも最後の最後のテーマ部分で「これがあるからこの曲は引立つんだよな~」と言うバッキングを披露してくれる。
パーキンスの参加したアルバムからは目が離せない。そして何よりもの特徴がバラード・フィーリングだ。
ブルージーなパーキンスからは想像もできないような、バラードでは聴くことができる。
「イントロデューシング」の〈ライラックス・イン・ザ・レイン〉は有名だが、流れるような感じの弾き方。これもやはり逆境を乗り越えて出来上がったのだろう。