クリフォード・ブラウン(tp)が注目を集めたのは、アート・ブレーキーのリーダー作「バードランドの夜」であろう。
名前の通りライブハウス、バードランドでのライブ録音によるものだが、ハードバップの夜明けと言われる名盤である。
この後メンバーが入れ替わるが、ジャズ・メッセージャンズの誕生前夜とも言われる貴重盤だ。
ことにブラウンの吹くトランペットは斬新で、確実にビバップから脱皮しようとしている。しかしまだまだビバップ曲の色濃さが残っているのは否めない。
僕がここで注目しているのは何もブラウンだけではない。アルトサックスのルー・ドナルドソンに注目してほしい。
チャーリー・パーカーを吸収しながらも自分のスタイルを既に築いているではないか。
ルー・ドナルドソンと言えば、ソウルフルな演奏を思い浮かべるが、ここで聴かれるドナルドソンは、まさにハードバップそのものである。むしろブラウンの方がビバップ的である。
リーダーのブレーキーは派手なドラミングで有名だが、彼が刻むビートは機会よりも精密である。その辺の所も考慮して聴くと、ブレーキーのよさが、ますます分かって得をした気分になる。
ブラウンはこの後ドラムのマックス・ローチと双頭のコンビを組み数々の名盤を残すも1956年、ブラウンの事故死によりその栄光に幕を閉じた。弱冠25歳である。