ここまで、モダン・ジャズの創設者、チャーリー・パーカー(もちろんパーカーひとりで作り上げたものではない)、マイルス・デイビス、リー・モーガンなどサックス、トランペッターを中心に語ってきたが、ここからもトランペッターの話しを中心にしていこう。
ケニー・ドーハムは演奏、作曲共に素晴らしいミュージシャンである。しかし今いちジャズの入門書などで取り上げられない。
取り上げられたとしても、「静かなるケニー」の「マイ・アイデアル」くらいなもので、他のアルバムはほとんど紹介されない。幸薄いミュージシャンである。
かく言う僕も、ケニー・ドーハムのアルバム、サイドメンで入っているアルバムなどは極力避けてきたひとりだ。
どうも音に力がない。トランペットと言うより、ラッパと言う言葉があてはまるような気がしてならなかった。言ってしまえば聴かず嫌いで、ドーハムを鼻から舐めていたのだ。
しかし、クラブ・ジャズでドーハムの「アフロ・キューバン」が流行っていると聞き、ちょっと聴きたい気になり「アフロ・キューバン」を購入してみた。
ここで僕はドーハムの作曲の才能に惹かれた。1曲目の「アフロディア」の曲想に、すっかりやられてしまったのだ。
すると今まで嫌いだったドーハムのトランペットの音色までが素晴らしく聞こえるではないか。ケニー・ドーハムを聴くなら「アフロ・キューバン」がお勧めである。