モダン・ジャズ・ピアノの開祖と言えば、当然バド・パウエルだが、パウエルはピアノ・トリオの構成も創りあげた人でもある。
それまでのピアノ・トリオはピアノ、ギター、ベースと言う編成であったが、パウエルはギターを抜いてドラムを入れたのである。
ドラムを入れることにより、フォービートをより細かく刻むことができると考えたのだろう。
それ以降ピアノ・トリオのスタイルはパウエルの創りだしたスタイルへと、とってかわる。パウエルは強度の躁鬱病で、アルバムによっては、別人のように思われるときがある。
今、紹介しようとしているアルバムは、パウエルの絶頂期の頃のアルバムである。
ヴァーヴレーベルに1949年~50年にかけて吹きこまれた、「ジャズ・ジャイアント」というアルバム。タイトルからして、すごい自身がみなぎっている。
堂々としたものだ。パウエルがつけたタイトルではないにせよ、それだけ内容は充実している。
パウエルの自作曲に触れることもできる。1曲目の〈テンパス・フュジット〉を聴いてみたまえ。この時期にこれだけクオリティーの高い作品を創り上げてしまうとは!
当然の如くリスナーの皆様方はパウエルの指がどうのこうのと、技術的話を議論する方々が多いようだが、それは評論家の大先生達の影響からだろうか。
そんな技術的な話しなどどうでもいいではないか。パウエルの創造性を超えた域に達した曲が〈テンパス・フュジット〉なのだ。
チャーリー・パーカーの創りだした曲も素晴らしいし、それらはパーカー・ブランドとして後継者に繰り返し演奏されている。
しかしパウエルはパーカーと違い、ビ・バップではなくモダンなのだ。
渡欧する前に作られた、〈クレオパトラの夢〉は一般的に有名だが、僕にしてみれば、創造性のひとかけらもない曲と、批評しておこう。