ジャズ初心者にはピアノ・トリオ10

ウォルター・ビショップJRと言えばチャーリー・パーカー・クインテットで、ちまちまとしたピアノを弾いているイメージが強いが、それを払拭したアルバムが「スピーク・ロウ」である。

特にパーカー亡き後に発売された「プレイズ・コール・ポーター」でのJRの演奏はひどい。

JRのお陰であのアルバムの価値が半減したと言ってもいい。一般的に脚光を浴びる人ではないのだ。

しかしこの「スピーク・ロウ」は違う。次から次へとフレーズが湧き出る泉のようだ。いったい彼をここまでのインプロバイザーに仕立て上げたのは誰か?

ベースのジミー・ギャリソンである。ギャリソンのギシギシと唸るベースに、JRのインスピレーションが活動を活発化させたのだ。 続きを読む ジャズ初心者にはピアノ・トリオ10

ジャズ初心者にはピアノ・トリオ09

まだまだピアノ・トリオの話しは続くが、初心者には、ピアノ・トリオが当たり障りなく聴きやすいことは確かなのだ。

それも名盤と、かけ離れた所にある、アルバムも多少あるが、名盤は後回しにしても別に支障はないだろう。

オスカー・ピーターソンのB級盤「プレイズ・ザ・コール・ポーター・ソング・ブック」と言うアルバムがある。

題名の通りコール・ポーター集である。コール・ポーターについては先に述べたので、ここでは多くは触れないが、アメリカを代表する作曲家である。

ピーターソンはこのアルバムでほとんどアドリブを弾かない。別にアドリブにこだわる必要もなかったのだろう。 続きを読む ジャズ初心者にはピアノ・トリオ09

ジャズ初心者にはピアノ・トリオ08

女性ピアニストと言うと、いかにも女性の良さを全面に出してピアノを弾いていると思っている男性諸氏は多いと思うが、それは全くの間違いである。

秋吉敏子にしろ、大西順子にしろハード・バッパーが多い。その例にもれないのがパット・モランである。彼女のピアノの力強さには驚かされる。

コーラス・グループで人気を博したモランだが、1956年録音の「ジス・イズ・パット・モラン」では力強い演奏を聴かせてくれる。

特筆すべきは、ビル・エヴァンス・トリオのレギュラーの一員であるスコット・ラファロの参加にあるのではない。

モランのピアノ・ソロを聴いていただきたい。これだけ感動的に強弱をつけて流れるようにピアノを弾く人も珍しい。 続きを読む ジャズ初心者にはピアノ・トリオ08

ジャズ初心者にはピアノ・トリオ07

1959年アメリカの喧騒(けんそう)から逃げるようにパリに渡ったバド・パウエルはパリで安定した仕事をもらい、精神的にも安定していた。

ザ・スリー・ボッセズと言う自らのグループも結成し、ブルーノート・クラブなどで盛んに演奏活動をしている。

アメリカ時代の精神的な発病もなく、パウエル自信もピアノを弾くことに喜びを感じているかのようだ。

パウエルのパリ時代のアルバムは評価が高いが、どうしても全盛期と比べてしまう評論家が多い。僕としては非常に残念でならない。

全盛期は誰にでもあるし、それが早いか、遅いかの違いである。マイルス・デイビスのように平均して評価が高いミュージシャンの方が珍しいのだ。 続きを読む ジャズ初心者にはピアノ・トリオ07

ジャズ初心者にはピアノ・トリオ06

モダン・ジャズ・ピアノの創始者バド・パウエルの全盛期は1947年~51年あたりまでか。

その後は体調の不良もあり指は重く、思うようにピアノを弾けないのがもどかしそうだ。しかし僕にはかえって1950年代中期のパウエルが好きだ。

「ムーズ」はヴァーヴレーベルに1954年~55年にかけて録音されたアルバムだが、音が重苦しく、かなりの力を入れて鍵盤を叩いている感じだ。

弾いているという感覚ではない。力が入らずピアノを上手く操れないのだ。ミスタッチも多いが、だからと言ってパウエルが急にピアノが下手になったわけではない。

神の手と言われた、ルーストセッションからは考えられないレベルだが、それでもパウエルのジャズにかける思いがしみじみと伝わってくる。 続きを読む ジャズ初心者にはピアノ・トリオ06