バルネ・ウィランはフランスのテナー・サックス奏者だが、1950年後期に頭角をあらわしてきた、いかにも白人らしいスタイルで演奏するのが特徴のテナー・マンである。
【バルネ】はケニー・ドーハムとコンビを組んだパリのライブ録音だが、1959年の時代背景を考えると、ハード・バップがパリで好まれて聴かれていたのが分かる。
1959年と言えばマイルス・デイビスのモードの誕生を皮切りにニューヨークではファンキーブーム真っ只中である。
この時期は渡欧するミュージシャンが多く、パリではクラブの仕事に事欠かないと言う都市伝説的なものがあったが、それはあきらかに都市伝説で、そうそうクラブの仕事の依頼がある訳でもなかった。
このアルバムの主役はあくまでもバルネだが、ケニー・ドーハムがフューチャーされている曲が多い。フランス人がジャズに理解を示していたのは確かである。
この日もケニー・ドーハムを聴きに来た聴衆も多かっただろう。冒頭の「ベサメ・ムーチョ」でのドーハムのテーマの解釈はさすがと言うしかない。
ドーハムを理解できるのなら初心者も持っていたい1枚である。